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(会員寄稿)安房大神宮の森 縄文小屋の茅の葺き替えフィールドワークを開催しました!【前編】

(会員寄稿)安房大神宮の森 縄文小屋の茅の葺き替えフィールドワークを開催しました!【前編】

こんにちは。高田造園スタッフの大澤です。

安房大神宮の森にて、「暮らしと大地の繋がりを考える三日間」縄文小屋の茅の葺き替えフィールドワークが1011日(土)~13日(月)の三連休に開催されました。

 

「縄文小屋の茅の葺き替えを通して、私たちの暮らしが、大地と、どのように繋がっているのか、一緒に探る旅をしませんか。」

というお声がけに対し、12名の方々にご参加いただき、有機土木協会スタッフ・イベント関係者・ゲスト・地域の方も含めると、最大で30名の方が安房大神宮の森に集まりました。

 

開催期間中は台風23号の影響で、雨が降ったりやんだりと、なかなか読めない天気でしたが、大きく天候が崩れることもなく、無事に予定していた葺き替え作業・探検ツアーを完了させることができました。皆様、本当にありがとうございました!

 

3日間のおおまかなスケジュールはこの通りです。

1日目:足場組、資材調達、葺き替え

2日目:資材調達、葺き替え、竹簾・泥づくり

3日目:葺き替え仕上げ、足場解体、棟の仕上げ、探検ツアー、インド菩提樹土中環境改善


以下、詳細を作業風景とともにご紹介いたします。


1日目


雨のため、タープの下で参加者の皆様と自己紹介をしました。ご近所の方から、遠くは福島の方まで、ご参加いただきました。


雨も落ち着き、いよいよフィールドワークがスタートです。

今回の指導をしていただいた秋田の茅葺職人の井阪智さん(写真中央の菅笠の方、通称アキさん)です。秋田県内の集落で茅葺の古民家に住みながら、環境を整え、土地を育て、様々な生き物と向き合いながら生活を営まれています。


葺き替え前の縄文小屋の様子(10月10日時点)もご紹介します。完成から1年以上が経ち、かなり大神宮の風景になじんできました。縄文の趣が出てきましたが、手前の資材置き場上部の藁で葺いた屋根は、かなり朽ちて隙間も多くなりました。「葺き替え」と題したフィールドワークですが、小屋中央部分の篠竹で葺いた部分は取り除かず、新たな篠竹を差し込む「差し茅」を行い、朽ちた藁の部分は取り除き、藁とセイタカアワダチソウを下地に、上から篠竹を葺く「葺き替え」を行いました。


普段の大神宮の森での施工と同じく、資材は基本的に現地調達になります。今回は、篠竹とセイタカアワダチソウは大神宮の森の周囲で調達し、藁は大神宮近くの参加者の方が稲刈り後に集めていただいたものを使わせていただきました。


ここからは縄文小屋の足場を組むチームと、茅になる資材を調達するチームに分かれ、作業を進めていきます。


まずは、葺き替えをするための足場組からご紹介します。

足場組とはいうものの、単管パイプなどは使わず、4メートルの丸太を柱にして、青竹をわたして足場の骨組をつくります。


丸太と青竹は箱結びで固定します。

この丸太柱は掘立ではなく、地面に置いているだけですので、支えていないと倒れてしまいますが、上から見てコの字の構造になれば、安定して自立します。

筋違を入れ、補強していきます。

安定したら、足場板を掛け、完成です。

足場に乗り、作業がしやすくなったら、屋根を抑えていた千木を取り外し、朽ちた藁を取ります。茅葺屋根の感動するポイントの一つですが、朽ちた屋根材は捨てる必要が無く、畑に撒けばそのまま肥やしになります。今回の朽ちた藁は、ぬかるんだ道の養生に利用しました。全く無駄がありません。


準備が整い、茅葺きの工程が始まりました。雨仕舞を考え、下から上へと茅差しを進めていきます。

茅差しは屋根の外側で差す人と内側で正しい位置に茅が入るよう誘導する人に分かれ、行います。


外側で茅を差す人と、

内側で茅を受ける人です。内部は暗いので、ヘッドライトを点けながら行います。

外側から差すだけだと茅が「押しぼっこ」(横方向の細い竹の留め具)にはまらず、内部が竹槍だらけのようになってしまいます。

このようになると、茅がしっかり固定できない・屋根の勾配に沿っていない状態になり、茅に隙間ができてしまう、茅の傾きが変わってしまう、などで雨漏りの原因になってしまいます。


真横から見た様子です。篠竹などが目に入ってしまうと大変危険ですので、差し茅をする時は、「差しまーす!」、「どうぞー!」と声を掛け合いながら進めます。この日に初めて会って、初めて茅を差す人同士でしたが、皆さん息ぴったりでした。

こちらは藁の下地づくりの様子です。藁束を屋根の骨組に立てかけ、上から押しぼっこで固定していきます。

茅葺の素材の違いで面白いのは、差す方向が植物によって変わるということです。一般的に茅として使うススキ・ヨシ、そして藁などは根元を下にして差すようです。基本的には、根元の方が太いため、雨仕舞としては適しているようです。一方で、篠竹の場合は枝や笹がついているため、根元を上にして差さないと、隙間に上手く入らないためです。


茅差しが一段終わると、上に上がるための足場の青竹を取り付けていきます。しっかり、体重を掛けられるよう、小屋の垂木と青竹を縄で縛るのですが、この時に使うのが竹でできた大きな針です。針穴に縄を通し、外側と内側の人で屋根に縄を通します。

作業が進むと、外の茅を差す人、中の茅を受ける人、篠竹をそろえて中継する人、と流れができてきます。茅に使う篠竹は、屋根の高さが上がるにつれてだんだんと短くなります。茅が差しやすいよう、根元をそろえたり、長さをそろえて切ったりと、自然と連帯感が生まれていました。

初日の作業では、屋根の高さの半分くらいまで差し茅・葺き替えが進みました。見比べてみると違いは一目瞭然で、下から青々とボリュームのある屋根に変わっていき、森のような、一気に若返った印象になります。

この笹の葉も上に向かっているものは雨漏りの原因になりますので、そういったものは剪定し、初日は終了しました。


2日目


茅に用いる資材集めの風景もご紹介します。


大神宮の近隣の方とセイタカアワダチソウを収穫しました。

篠竹集めの様子です。

葺き替えに使いやすい細い篠竹を探すのですが、細い篠竹のみが群生する場所があり、不思議な体験でした。普段は太い、細いものも気にしないのですが、資材として目を向けると新たに見えるものがあると感じました。

集めた場所を掃除しながら、枯れ竹も集めて炊飯用に使いました。森も綺麗になって、燃料も賄える、本当によくできている流れを感じました。


資材を集めては、どんどん茅を葺いていきます。普段は草刈り時に厄介者と思っていたセイタカアワダチソウも屋根に葺いてみると、とても綺麗に見えてきます。ちょうど、花が咲いている時期だったこともあり、何だか幻想的な雰囲気がしました。雑草と思っていたものも、こうして目線が変わると、価値観が大きく変わるような体験が、大神宮ではよくあります。

初日同様に茅葺を進め、2日目の終わりには茅葺作業はほぼほぼ完了しました。かなり、もっさりしてきました。

並行して、翌日の棟の仕上げ準備も進めました。

細めの竹を集めて、竹簾づくりです。

こちらは棟の防水のための泥作りです。元田んぼだった場所の粘土と川の水、切藁を軽トラの荷台で踏みながら練っていきます。


フィールドワークもいよいよ大詰めです。

最終日の内容は後編に続きます!


後編はこちらから!