2025年10月30日(木)・31日(金)で行われました「ふたつの教会がつなぐ、土への祈り ~祈りの場所の土地を育てるための環境改善ワークショップ~ 」についてのレポートになります。
本ワークショップにスタッフとして参加しました角館宏幸がお送りします。
10/30(木)はカトリック妙高教会 赤倉山荘でコンポストづくり、10/31(金)は池の平クリスチャン村 での新築された教会周辺の雨水浸透改善のワークショップでした。また、10/30(木)は赤倉山荘にて、高田宏臣さん、小倉沙央里さん、羽ヶ崎章さんによる対談と懇談会が行われました。
両会場がある場所は、妙高山の東側の麓にあり、標高およそ700m程度の別荘地・避暑地で、いち早く落ち葉が落ち始め、紅葉が始まっていました。
10/30(木)は妙高山が日中もよく見える気持ちのいい晴れの日でした。10/31(金)は午後から雨予報で曇りでしたが、作業のしやすい気候で最後まで雨に降られることなく、とてもよい日取りとなりました。両日ともに、造園や林業、大工、農業の方などから、主婦の方まで、さまざまな方が参加され、にぎやかで充実したワークショップとなりました。

10/30(木)
竹を使ったコンポストづくりを行いました。このコンポストは普段の台所で出る残渣(野菜くずや生ごみ)などを、ゴミとして生活から切り離して捨ててしまうのではなく、お庭などで良い土になるように分解をしてもう一度循環させるためのものです。

土地を踏み傷めすぎないために必要な基本作法としての、道具や資材のリレーを参加者のみなさんと行ったあと、使用する炭や杭や落ち葉などの資材の解説を高田さんが一つ一つ説明をしていきます。そして、コンポストが良い働きをするために欠かせないとても大事な下地作り”について解説があったあと、実際にコンポストを作っていきました。

杭を打ち、竹割りで竹を割り、棕櫚縄で竹を結び方の解説があり、全員で協力をして竹を杭に結びつけて枠をつくりました。最後、落ち葉をコンポストの中に入れて、最初の残渣を入れることができる状態にして完成しました。

10/31(金)
新しい教会の周辺のお手入れを行いました。実は、10/30(木)午前中にスタッフだけでの事前作業をする予定でしたが、多くの協力者の方々が集まってくださって、すでに前日からまるでワークショップのようになりました。おかげで教会の裏手の藪が刈ることができ、風通しもよい状態で、本番当日の31日は気持ちよくスタートできました。

今年完成した教会の敷地内は、建設のための造成がされてから間もないため草はほとんど生えておらず裸地となっています。敷地内は全て繋がった平坦ではなく、ゆるい傾斜が点在しています。教会の裏手は60~70cm程度の小さい土手があり、その先は妙高山を見上げる緩い斜面になっており、藪化した空地となっていました。教会敷地内の斜面上部から、裸地となっている土地に表層水が流れ込んだあとが無数に残っていました。

新しく素敵な教会とその土地が健やかに育っていくために、周辺の整備で行ったことは、おおよそ下記のことを行いました。
・作業動線上の斜面部に、階段や簡単な段切り面をつくる
(整備作業の中で人が行き来することで斜面を崩し固めて土地を傷めてしまわぬうように)
・教会裏側の同一平面部に放置され積んで藪がからんだ大量の杉の幹や枝を取り出す
・教会裏側の同一平面部の斜面際に浸透穴を設ける
・教会裏側の斜面上のやぶを少し整理して、地形をつぶさに見ながら、土を置く場所をつくる
・教会裏側の斜面がダラダラしている部分を垂直水平に削り取り、垂直断面をつくる
・その掘り取った断面箇所を、取り出した杉の幹や枝などを利用して保護する
・教会の切妻屋根の両側に溝を掘り、「雨落ち」を設ける
・掘ったり斜面を垂直に削ったりして出た土は、置く場所をつくって直接収めたり、麻袋製の土嚢に入れて土嚢積みをしたりして利用
などの造作を施しました。

高田さんと状況を観察し解説を聞き、実際に全員で手を動かし、その場にあるものや周辺で手に入る資材を使って、いろいろな要素の作業をすることができました。教会という多くの人が集まり祈りを捧げる場で、このように協力し合いながら没頭して楽しく作業する光景は、とても意味のあることだと感じました。献堂式を数日後に控えたこの時期に行うことができてよかったと思います。
手を入れるべき箇所はまだまだ多くあり、土地と会話をしながら多くの人が一緒に手を動かして作業することが、これからも終わりなく続くことを願っています。

10/30(木)の夜は、赤倉山荘で御三方の対談と参加者の懇談会がありました。対談の内容はこの2日間の作業の意義とも繋がる、とても素晴らしいものでした。

羽ケ崎章さんは、新しい教会を設計された方で、書籍『土中環境』で松林改善の事例の中で新潟市長と高田さんと三者対談されていた方です。高田さんとは、その松林改善の時からのお仲間とのことです。小倉沙央里さんは、今は各国の雑穀とその知恵を研究されていますが、世界各国の伝統知を探求されている研究者であり冒険家のようでもある方です。小倉沙央里さんは、この12月に一般発売される「有機土木ライブラリー1」の高田さんと共著されている方です。
懇談会・対談は、参加者の皆さんと一緒に準備をしました。岩手県で自然農園ウレシパモシリを営んでいる酒匂さんを中心に、たくさんの素晴らしい素材を提供して下さり、とても豪華な懇談会となりました。

対談では、小倉沙央里さんの研究内容の講演からはじまり、そこから色々な話題に移り、高田さんと羽ケ崎さんがそれに合わせてお話するという構成になりました。
沙央里さんは初めていく国や民族のところへ行くと、じっと座りその風景の絵を描くそうです。じっくりとその景色に入っていくことで、ただ通り過ぎ行きながら見る景色よりもたくさんの気づきがあるということだったと思います。現代社会の中では時間に追われて立ち止まることも強い意志がないと難しく、また、効率的に単一作業ができる草刈り機やユンボなどの便利な機械もあり、じっくりと立ち止まることが難しい時代なのかもしれません。高田さんも普段ユンボを使うことは多いですが、ユンボを入れる前には必ず生身の身体で鍬を入れると対談の中でお話していました。草刈り機を手にしてしまえば、小さな草花の存在や小さい地形の変化は圧倒に読み取りにくくなります。普段車で過ぎ去る道を歩けば、こんなところにあんなものがあったのかという気付きがあります。

新しい教会の環境を、改めてじっくり観察して、実際に生身の身体で手を入れるということは、土地との関係を取り戻すことです。その結果良くなって育っていく土地の景色が、この教会の窓から妙高山と共にみえる風景となっていくことが健やかな人間関係もつくっていくだろうと信じています。
