1. コラム
  2. (会員寄稿)2025年11月12日,13日 山口県 防府市にて講演会とワークショップを行いました
 

(会員寄稿)2025年11月12日,13日 山口県 防府市にて講演会とワークショップを行いました

高田造園スタッフの堀越侑莉奈です。

この度、「ほうふ里海づくり協議会」さま主催にて、1日目は講演会、2日目はワークショップを行ってまいりました。


講演会では、定員100名の会場は満員御礼。オンライン配信も合わせると200名ほど参加者が集まり、山口県での水循環における関心の高さが伺えました。


水循環再生の活動に関わるお三方の環境における視点の共有や施工事例をもとにした最新の情報に、会場からは質問が飛び交い、講演会はあっという間に終演を迎え、盛況のうちに幕がとじられました。


また、ロビーでは物販の他に、“アイゴのフィッシュアンドチップス”を提供しておりました。

日本では過去30年で藻場が半減したといわれており、瀬戸内海の磯焼けも近年深刻化しているとのこと。原因は海水温上昇、沿岸環境の悪化、海の酸性化など、様々ですが、原因の一つである植食性魚類「アイゴ」という魚の食害があります。

会場では、「防府市藻場造成による豊かな里海づくり協議会」による活動の防府アイゴプロジェクトとして、アイゴの食害を解決すべく、アイゴのフィッシュアンドチップスが参加者に配られました。美味しく食べて藻場を魚の食害から守る活動は、今、日本の海で何が起こっているのかを知る、貴重なきっかけになりました。


翌日は、海藻研究所および海中景観研究所 所長の新井章吾さんによる海底湧水を巡るフィールドワークと地球守・有機土木協会代表理事の高田宏臣による山から里での土地の見立ての環境改善ワークショップが開催されました。参加者のみなさんは普段なかなか見ることのない視点に唾をのみ真剣な眼差しで耳をかたむけ、お話しを聞いておりました。


防府市富海海水浴場にて川の底から湧き出る海底湧水を採取し、それぞれの湧き出し場所の湧水を味見しあうという、普段ではなかなか想像もつかない体験を行いました。

興味深いことに海底湧水は採取する場所によって味が異なりました。

少しニガリのような味がしたかと思えば、そこからほんの1メートル離れた場所で採取したものはすっきりと、ほの甘い、など、不思議と驚きの連続でした。

かつてに比べて、海底湧水の湧き出しが激減している現状はかなり深刻で、このままいくと日本の湧水はどうなってしまうのか、危機感を覚えました。



高田代表理事による土地の見立て

 

先ほどの富海海水浴場の上流部にある「琴音の滝」に足を運び、海とつながる山では、今、一体何が起こっているのか、環境を見る視点を学びました。


琴音の滝への道に入る入り口から見た景色。深く大きな谷を横断する山陽自動車道。山に向かう先にはトンネルがあります。一体、山にトンネルを掘るのにどれほどの土をかき出し、その土はどこへいってしまったのか。思いをめぐらせると、想像を絶する事実が垣間見得てきます。


段地形になっていることから、ここは特に山の水が豊富に集まる場所であることを解説を通して理解を深め、地形に目を向けると、昔の人がどうやって、土地とともに営んできたか、感じられます。


そこに敷かれる防草シート‥。水の多く集まる地形の場所で、水が染み込みやすい平面のある場所に水が染み込まず、土地の環境を悪化させる影響について、解説を聞きます。


防草シートの影響は、環境や私たちの暮らしに何をもたらすのか、普段、見ることのない視点に参加者の皆さんも真剣にお話に聞き入っていました。


琴音の滝に向かう道途中にある、大きめの砂防堰堤。赤みがかった水が流れていました。

 

琴音の滝の上流部にて


次に、琴音の滝から、里に降りて、民家周辺の土中環境の視点について学びます。


普段、何気なくある日常の景色の中でも、水は流れて、土中環境を滞らせている原因があります。


この写真では、どこにあるでしょう…。


水が集まってきやすい場所に手ぐわで穴を掘り、水が浸透していくように石を指します。 


今回は、簡単なレクチャーなので、例をお見せする形で、参加者のみなさんに視点を共有しました。


石垣の際も、浸透箇所として、ポイントが高いです。



新設したデッキの下の土が乾いて崩れてきています。束石が外れているものも…。


その原因と対策について。


海から始まり、山から里へ。

中身の濃い一日に、参加者の皆様も目をキラキラさせ、次はどうしようか、この民家の改善をしたらどうか、など、山口県防府市でもふつふつと、土中環境を通じた視点と繋がりが広がりつつあります。