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(会員寄稿)『大神宮の森へ』& 『有機土木ライブラリー』創刊記念トークイベントが開催されました。

12/26、紀伊國屋書店新宿本店にて、
『大神宮の森へ』および「有機土木ライブラリー」創刊を記念したトークイベント
「コモンズと有機土木 ― 安房大神宮の森から等々力渓谷まで」
が開催されました。


年の瀬の慌ただしい時期にもかかわらず、200名近くの方にご来場いただき、会場は終始あたたかな空気に包まれていました。


冒頭、高田は、

「クリスマスに、おじさん二人の話を聞きに来てくださってありがとうございます」

と笑いを交えて挨拶。

和やかな雰囲気のなかで、トークがスタートしました。


前半では、『大神宮の森へ』の内容にも触れながら、現在整備を進めている安房大神宮の森についての話がありました。

この森は、単なる緑地ではなく、かつて人が暮らし、手を入れながら守ってきた場所です。

地形や水の流れ、植生のあり方から、先人たちの営みが感じ取れる場面が随所にあり、そうした気づきが日々の現場につながっていることが紹介されました。


そこから見えてくるのが、「コモン(共有財産)」という考え方です。

それは人間だけのものではなく、土や水、植物や微生物など、あらゆるいきものと共有されるもの。

そうした感覚を大切にしながら、現場と向き合っていることが語られました。


続く中島岳志さんの話では、囲碁や思想、医学などの例を交えながら、

理屈や分析だけでは捉えきれない世界の見方について語られました。


土地の成り立ちや水の流れ、周囲との関係性を感じ取りながら判断していくことの大切さが、さまざまな角度から示されていきます。

その流れの中で、中島さんは『土中環境』の一節にも触れながら、

人が自然の外側に立つのではなく、その一部として関わっているという視点を紹介しました。


その言葉は、これまで現場で大切にされてきた感覚を、あらためて言葉として捉え直すものでもありました。


これまで私たちは、ロゴスそのものを否定するのではなく、ロゴスだけに寄りかかることの危うさを、現場の感覚を通して捉えてきました。

感覚を切り捨てて数値化するのではなく、感覚を大切にしたまま数値とも向き合っていくこと。

現在は、そうした考え方に共感する専門家や協力者の支えを得ながら、その両方を引き受けていく段階へと歩みを進めています。



後半の対談では、中島さんがご縁をつないでくださった等々力渓谷をめぐる取り組みについて紹介がありました。

都内でも稀に見る自然豊かな渓谷でありながら、近年は倒木が相次ぎ、現在は立ち入り禁止となっています。


この場所では現在、地元の造園会社の方々が中心となり、有機土木の考え方を学びながら現場での改善に取り組んでいます。


ビフォーアフターの写真やイラストを交えながら、

「自然の理に負荷をかけず、確実に回復へ向かわせる」取り組みの様子が共有されました。来年3月には、渓谷の再オープンが予定されています。


人と自然がどのように関わり直していけるのか。

その歩みを、これからも丁寧に見つめていきたいと思います。


なお本イベントは、羽鳥書店さまの主催により、紀伊國屋書店さまのご協力のもと開催されました。


あたたかな場をひらいてくださったことに、心より感謝申し上げます。


(有機土木協会事務局 来島由美)