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(会員寄稿)2026年3月18日 小田原城跡御用米曲輪発掘調査現場見学ツアーイベントが開催されました。

2026年3月18日に、小田原城跡御用米曲輪にて発掘調査現場見学ツアーイベントが開催されました。

きっかけは、地球守・有機土木協会のリサーチャーとして活動されている熊田浩生氏からのご紹介でした。

 

15世紀中ごろに築城されたといわれる小田原城。戦国時代に関東一円に勢力を及ぼした北条氏が100年にわたって

本拠地とした場所でもあります。その最盛期には、周囲約9㎞に及ぶ長大な総構を施した国内でも最大級の城郭でした。

 

この貴重な文化遺産である小田原城跡の価値を次代に確実に守り伝えるために、小田原市により、今年で10期目となる

調査が行われています。今回の調査において、礎石や石組水路、玉石列に加え、広範囲にわたる砂利敷遺構が確認されました。

これらの発見が、地球守・有機土木協会の行う施工に通ずる部分・学習価値が大きいのではないかという思いから、

小田原市文化財課の方にご協力いただき、企画・開催されたツアーになります。 

 

当日は御用米曲輪の見学に先立ち、代表理事の高田をはじめ、数名で小田原城の総構の一部を探索しました。

特に圧巻だったのは、総構の北西部、八幡山古郭にある小峯御鐘ノ台大堀切です。


小峯御鐘ノ台大堀切東堀


この場所は、尾根伝いに箱根山と連なっているため、尾根上の往来を遮断するために大規模な堀切が構築されたといわれています。
法面の角度は50~60度、堀底の深さは約10mほどあり、当時の北条氏の土木技術の高さがうかがえます。

シラカシやクスノキが根を張って、安定する法肩

尾根伝いに寺、墓地があり、中世の頃には土葬墓があった可能性も。

水平に伸びる根のあいだに差し石があり、過去にしがらが編み込まれたような跡がありました。


堀切周辺には、随所に安定した空石積の跡も見られました。


有機土木の施工における技術が発見できる場所でしたが、この地域を探索する理由の一つにもなったのが、
「水之尾」という地名でした。
箱根山から伸びる尾根の端に位置するのがこの付近であり、水が豊富に得られたことに由来しているかもしれません。

ここから尾根を下り、いよいよ小田原城に近づいていきます。

小田原駅から向かって見たときに、小田原城は独立した高台に建っているように見えますが、

おそらくはさきほどの尾根の先端に当たる位置が築城する場所として選ばれたのではないでしょうか。


「迅速測図」歴史的農業環境閲覧システムより


明治初期から中期にかけて作成された迅速測図をみると、小田原城本丸までが尾根として連続していたことが推測されます。
背後の尾根からの最終防衛線としてつくられたであろう堀切に沿うように東海道本線の線路、アンダーパスが開通し、
現在の尾根が分断された形になったのではないでしょうか。

 

この場所に築城された理由として、城郭としての防衛力、東海道の見晴らしのよさ、といった理由も考えられますが、

水の湧き出しがあったのではないか、ということに私たちの関心が向きました。

豊臣秀吉の小田原攻めに3か月耐えた小田原城でしたが、長期間の籠城には、食料はもちろん、水源の確保が必須だったはずです。

用水は分断される可能性があるため、城内のどこかで井戸などから水が豊富に得られる場所があったのではないでしょうか。

尾根の鼻先に当たる位置に寺社仏閣が建てられることが多いように、小田原城も水に恵まれた立地であったと考えると、
有機土木の観点からも大変興味深い場所でした。

 

ツアー外の話が長くなってしまいましたが、ここからは御用米曲輪の様子をご紹介します。 

 

 

 石組水路では、安山岩が小端立てされている様子が見られ、調査で掘削された断面からは、層状盛土をしたと思しき

様子も見られました。

瓦が大量に出土した場所も見られました。ここでは、暗渠に瓦片が用いられたかは定かではありませんでしたが、

瓦と土を積み上げた瓦積塀の遺構を見ることができました。


文化財保護法上は、江戸時代の史跡として登録されている小田原城は、江戸時代の遺構が発掘されると、それ以上の

掘削調査を行うことができないようで、その下にも戦国時代の遺構が隠れていることがあるようです。
今回、見学することができた範囲以外にも、ため池や庭園の遺構なども発見されているため、こちらは
小田原市のホームページにて、是非ご覧ください。

 

御用米曲輪の調査は今後も続き、調査の進捗に合わせて随時ツアーも開催されるそうです。

冒頭でご紹介した小田原城の総構や地形もあわせて、是非訪れてみてください。

 

ご覧いただき、ありがとうございました。

(有機土木協会事務局 大澤秀幸)